「ベンジャミン・ブリテン」を読む

音楽
07 /05 2014


「ベンジャミン・ブリテン」(デイヴィッド・マシューズ著、中村ひろ子訳・春秋社)を読みました。

著者はホルストの「惑星」に冥王星を補筆したコリン・マシューズ氏のお兄さんだそうです。

《シンプル・シンフォニー》、《青少年のための管弦楽入門》、《ピーター・グライムズ》、《戦争レクィエム》など著名な作品も多いブリテンですが、意外にも書籍はこれまでのところ日本では一冊もなかったそうです。

そんな中、昨年初版が発行された本書。「訳者のあとがき」に、コンパクトな入門書として、『ブリテンの人となりや作曲家としての重要なターニングポイントを深く理解した上で、バランスよくまとめられている。』とあります。

読んでみて、全く同感でした。作曲家フランク・ブリッジに見いだされたこと、テノール歌手ピーター・ピアーズとのパートナー関係、そして、《ピーター・グライムズ》など代表曲の作曲過程などをエピソーゾを交えて盛り込まれており、とても読みやすい一冊でした。

各章には興味深いタイトルが付けられています。
第1章 一人の男の子が生まれた
第2章 行って、遊んでおいで、坊や
第3章 何よりも冷たい愛が
第4章 アメリカは、きみたちが決めたとおりの国になる
第5章 どこの港が平和を守ってくれるのか?
第6章 固く結ばれた私たちの魂
第7章 果しない海原で
第8章 眠りは癒しの力
第9章 平和の中で私は幻影を見つけた
第10章 死が私に自由をもたらすだろう

印象的なセンテンスはここでしょうか。

p4~5
ブリテンの世界は、危険と、しばしば恐怖に満ちており、そこでは無垢な魂はたちまち堕落する。一時的に美や愛によって心が安らかになることがあるが、眠りだけが唯一、安全と信頼が復活する場なのだ。


p101
ブリテンとピアーズは、ある程度までグライムズは自分たち自身、すなわち平和主義者にして同性愛者というアウトサイダーの立場を象徴するものと見ていた。しかし、グライムズをより一般的な、ハンス・ケラーいうところの「適応できなかった男」として造形することによって、二人はこのオペラを単なる私的作品から脱却させることができたのだ。



おかげで、ここ最近は、音楽の方もブリテン漬け。色々な曲をとっかえひっかえ聴いていますが、初期の作品、「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」作品10なんかも意外にいい!

港町ローストフトの北海を見渡す家に歯科医の父と、アマチュア歌手の母の間に生まれたブリテン。生涯、海とのつながりをもった作曲家と言われていますが、まだまだ知らない曲も多いので、色々聴いていってみます。
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コメント

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ピーター・ク゜ライムズ

へー、ブリテンというとかなり著名な作曲家なのに、今までまともに取り上げた本は無かったのですか・・・何か意外ですね。この本、かなり興味があります。ピアーズとの怪しい(?)関係とか「ピーター・ク゜ライムズ」なとはとても面白そうですね。
日本の紀元節2600年の祝典音楽の委嘱作品として依頼されたのに「シンフォニア・レクイエム」という祝典に相応しくない音楽を書き上げてしまうのは何かブリテンらしい話ですし、それを忘れたかのようにN響を客演指揮した際は、何食わぬ顔でこの曲を振っているのも実に彼らしい話だと思います。
歌劇「ピーター・グライムズ」の話は何が書かれているか興味津々ですね。これ意外と怖い話でして、漁村での村八分は、現代風に言うと、周囲に溶け込まない「異分子」をはじき出し、ネットの書き込みで誹謗中傷をするような感じもあり、自分という存在を守り続ける主人公とそれを冷たく見放す周りとの軋轢というか疎外感をテーマにしたような話でもあるので、そのあたりのブリテンの考えでもあれば、何か面白そうな感じもします。

Re: ぬくぬく先生様へ

こんにちは。ピーター・グライムズは、演奏会形式で一度だけ鑑賞しましたが、ご承知のとおり共同体の中で、エレンとバルストロード船長以外の無共感は徹底していて、そしてグライムズの死後、何もなかったかのように日常が続くあたりでは恐ろしさを感じますよね。
本書では多くの作品の制作過程に触れられていますが、一曲ごとはあまり多くはないことを補足しておきます。シンフォニア・ダ・レクイエムについては謎が多いですね。金に困っていたと書いてあるものもあれば、当時の日本へのあてつけのように受け取る向きもありますよね。曲はとてもいい曲だと思うのですが・・・。
コメントありがとうございます。